第4話 「恥じらい〜雨に打たれて〜」

「どうしてあの人がモンタギューの息子なの。例えこの花に名前がなくても、甘い香りに変わりはないのに。」

原文。第二幕第二場、バルコニーのシーン。


'Tis but thy name that is my enemy;
Thou art thyself, though not a Montague.
What's Montague? it is nor hand, nor foot,
Nor arm, nor face, nor any other part
Belonging to a man. O, be some other name!
What's in a name? that which we call a rose
By any other name would smell as sweet;
So Romeo would, were he not Romeo call'd,
Retain that dear perfection which he owes
Without that title. Romeo, doff thy name,
And for that name which is no part of thee
Take all myself.

恐らく冒頭に引用したセリフは、この長いセリフを短くまとめたもの。演劇だったら大げさに情熱的に言わなければいけないところだけど、このアニメでは現代のアニメらしく素朴にさらっと言っていて、それでいて内に秘めた情熱は感じられ、さらに原文のロジックも保存していて、非常に良かった。

今回はそれ以外にも名前の問題を軸に据えた脚本で、ロミオとジュリエットが重なり合ってしまうまでのシーンを無理なく、しかもゆっくり空を飛ぶシーンなど魅力的な場面を含めて描いていて、原作にとらわれない現代のアニメらしい表現で好感が持てた。原文への忠実さとかまったくこだわらないエンターテイメントの文脈だからこそ、こういう原文に対して大胆な変更を加えた効果的な表現が出来るんだと思う。

ロミオとジュリエットそれぞれ社会的な立場と個人の自由を肯定したい本心の対立が明確に見えてきて、全体のストーリーとしても面白くなってきた。もう悲劇的な終結を迎える材料は十分に揃っていて、原作を知らなくとも目を背けたくなってしまうところ。そんな緊張感こそがまさに「悲劇」の魅力だと思う。