最終話 「ロケットガール -rocket girls-」

うまくいったかと思ったら絶体絶命のピンチに陥って、ギリギリでそれを克服してハッピーエンドという予定調和の内容で心が動くところがなかった。演出や脚本の出来自体は悪くないと思うんだが、意外性がないと何度も見返した作品を見てるような気分になってしまう。

また、シリーズ後半の主役だったはずの茜の心情の描写がほとんどなく、ゆかりがいつも通りの気の強さを見せていただけだったのも残念。ゆかりを主役にしてもいいんだが、いずれにせよ、キャラの苦悩や成長といったものと現実の困難が結び付けられてないので、キャラアニメとしても感動が薄い。

ラストは前回も含めてあまり魅力がなかったが、シリーズ全体としては非常に楽しめた作品だった。その理由にはまずキャラの魅力がある。主役のゆかりは、負けん気の強い性格で、基地の大人たちに対して対等以上に接しているのが気持ちよかったし、またオーソドックスな性格として感情移入しやすいキャラでもあった。

この作品のもっとも特別な魅力はマツリで、不思議系キャラとしての魅力はもちろんのことだが、声に得体の知れない優しさを感じられたのが印象的だった。あまりセリフでは表されてなかったが、彼女がサポーターとして他のメンバーを励ますのはものすごく力になったんじゃないかと思った。

この二人が元気のいいキャラなら気の弱いのも一人ぐらいということで考え出されたであろう茜だが、自分の欠点を克服しながら情熱を捨てずに努力していく姿は、単なるステレオタイプのキャラを越えた強さを感じるものだった。知性派としてちょっと足りないほかの二人をサポートしているのも個性が感じられて良かった。

主役の宇宙飛行士だけでなく、基地の大人たちもそれぞれ個性的で魅力的だった。みんないい加減で自分のことしか考えていないようで、実は少年のような宇宙に対する熱い情熱を持っていて、本当は優しい人たちであることが様々なエピソードからよくわかった。まだ子供であるゆかりたちに対して、保護者や冷静な大人としての役割がはっきりと描かれていたのも好感触だった。

構成としては恐らく制作側の都合ではないと思うが、とにかく詰め込みすぎだと誰もが感じたと思う。しかし、急展開の中でもキャラの魅力や、宇宙飛行の理屈の面白さや難しさなどは十分に描けていたと思う。その辺の詳細は各話感想で。

宇宙物としては、個人的には前例が王立宇宙軍ぐらいしか思いつかないのだが、それが悩める青年のどろどろした青臭い夢の実現がテーマだったのに対し、こちらは普通の元気な女子高生の子供らしさを前面に押し出したもので、どろどろした部分は保護者としての大人たちに任せていて、すっきりとした爽快な青春物になっていたと思う。全然違った魅力を見せてくれたのが良かった。

しかし宇宙船の描写としては、王立宇宙軍には遠く及ばなかったように思う。CGを使ったロケットや機械類はショボく、全体的にチープな空気をどうしても感じてしまった。それに王立宇宙軍にはあの発射シーンがあり、そのインパクトに及ぶシーンはなかった。

とはいえ全体としては宇宙飛行というあまり馴染みのない世界を、生き生きとしたキャラを使ってコンパクトな構成で見せてくれた傑作であったと思う。是非今度は余裕を持った構成で第二期を見てみたい。ゆかりたちともうお別れかと思うと寂しすぎる。