第4話 「プレイ」 & 第5話 「手を抜くな」

非常に面白い。まず演出方針として、常に試合の自然時間に乗せて、それぞれのキャラの主観を移動していくという方法がとられている。普通物語では物語に必要な時間だけを描いて、重要でない時間は省略するものだけど、このアニメでは試合内ではそういった省略が行われないので、一球一球とすぎていく野球特有の緊張感のある時間の流れをリアルタイムで感じることが出来る。物語内の時間と現実の自然時間を一致させる手法はよくあるものだけど、さすがに野球作品ではなかったんじゃないだろうか。

その手法によって出来てしまう緊張感の空白は、あたかも心の声を聞くことが出来るマイクを持ったカメラマンが駆け回って取材してるかのように、それぞれのキャラの内面を描くことによって満たされている。この作品の特異なところは、不安定な内面を持った主役と安定した内面を持った脇役という区別がないことで、内面を描かれるほとんどのキャラが、他人の内面がわからないことによる不安感を抱えている。だから敵のチームのも含めて誰かが主役という感じがしない。今回も三星高校の部員が主役であるように感じられることが何度もあった。

それによって強く感じることが出来るのは、野球がチームプレイのようで実際はひどく孤独なものでもあるということ。結局のところ自己中心的な行為の総体でしかないという、あまり知りたくないリアリティを総合的に把握してしまう。それがこの作品の独特の暗さを生み出している。しかし、だからこそ三星学園の和解は心を打つし、三橋と阿部の間の繋がりが緊密になっていくのを強く感じる。徹底的な自己中心性のぶつかり合いの結果に生まれた同意には嘘がないから。

しかしその内面の動きを全く把握せず完全に蚊帳の外にいて、ついには本当に網越しに映っていたマネージャーはいったいなんなのだろーか。