第5幕 「うわぁぁぁぁん」

キャラの感情の流れに理解しづらい部分もあり、展開に強引さを感じるものの、なんだかよくわからない青春の熱さが感じられたのが良かった。最初は野乃の行動が全てを理解した上でやってることで、後で実は完全に正しかったことが証明されるというオチかと思ったが、理咲が同等に正当っぽさを持って反対のことを主張してるのを見て、野乃の行動も完璧なものではないらしいことがわかって来た。だからと言って野乃は自分の主張を変えるわけでもなく、結局は解決せずに二人が喧嘩して共倒れで終わってしまう。アニメでは良く、完全に正しい真実を知っ手いるようなキャラが登場するけど、現実にはそんな自身を持った人間は存在しない。自信があるように見えても実は確固たる根拠があるわけではなく、心の底では不安を抱えている。今回のどっちつかずな結論はそんなリアルさを感じさせるものだった。

だがそれを狙ってやってるのかどうかはわからない。作画やアニメーションは不自然なところが多く、制作がうまくいっていないのは明らかで、脚本も同様に注意が行き届いていないということかもしれない。しかしストーリーの進行はゆっくりで十分に間はとってあり、キャラクターに存在感を感じるだけの余裕は十分にあった。例え制作者の意図に沿ってなかったとしても、十分に取られた間には嫌でもキャラに存在感を感じてしまうもの
で、それはそれで楽しめる。出来のいいアニメはキャラの感情の動きや行動の因果関係が完璧に、一意に把握できるものだけど、こういうなんだか良くわからない存在感を感じることができるのも悪くない。

人の理想とする青春は一つの物語を志向する調和の取れた人間関係であり、マンガ・アニメではそれが描かれることが多いけど、実際の青春はそれぞれの勝手な欲望の妥協点にある見せかけの調和でしかない。まあそんな大げさなことを言うほどに出来のいい作品だとは思いませんが。