第2話 「月光」

実に見事な構成と演出で、しかもそれらが一番の問題であるメインのカップルのお互への感情の表現に十分に奉仕していて、今期の最大の期待作と思わせるに十分な出来だった。まずシリーズ全体の構成として、エマとウィリアムの別々の生活の中でお互いのお互いへの思いを描いていくのが、一度別れたらそう簡単に再会できないというリアルさを作り出している。安易に再会してしまうのはご都合主義に見えてしまうもの。

ウィリアムの側にしろエマにしろ、相手のことを忘れて普通に過ごすこともできるということが、お互いの生活が丁寧に描かれてることからわかる。エマの側では使用人として上手くやっていることがイルゼとのやり取りなどからわかるし、また鳥に餌をあげるシーンなどからは、そのままでも幸せな生活を送れるということがわかる。ウィリアムの側では、エレノアとつきあうことが出来ないにしても、個性的な兄弟たちに囲まれて、苦労も喜びもある生活を送れるということがわかる。

クリスタルパレスでのウィリアムの回想や、ダンスパーティでのエマの涙から、やはりお互いのことが忘れられないことがわかり、日常描写中心の流れが徐々に崩壊していく。そうしてその崩壊が二人が、同じ場面を回想しながら満月を見つめるシーンで頂点に達する。同じ月を見てるということから、二人が同じ世界に生きているという実感が増すこともあって、実に感動的。このシーンを見せるためにこれまでの話が合ったということがはっきりとわかる。何が見せたいかがはっきりしてるのは脚本としては重要なこと。エマの側では伏線も十分に貼られている。しかしそれは本当に伏線つまり暗示であって、露骨にフラグが立ったというような印象を与えない配慮は十分に行き届いている。

その見事に構成された各シーンの見せ方も素晴らしい。一つ一つの表情にはっきりとした意味があって、それを見せていくことによって言葉がなくても感情の動きが十分にわかる。これは脚本、演出、作画のどれが悪ければ失敗に終わってしまうのであって、たぶん制作管理も含めてクオリティのコントロールに確信があるから出来ることだと思う。

エマの仕えてる家の風習や、クリスタルパレスの見世物などは、設定が作りこんであって、19世紀イギリスらしいと思わせるに十分なリアリティがあった。考証が正しいかどうかは知らないが、正しいような錯覚を起こさせるに十分だったとは最低限言える。そしてラブストーリーの舞台としてはそれで十分。

予告や伏線から判断するにまだまだ二人の再会は先のことのようで、タメにタメた果ての出会いにはどれだけ感動があるんだろう思うとすごく楽しみ。