第9話

今回は佐天と黒子の対比がテーマになっていたわけだけど、その対比を強調する直球のシリアスな表現が両方ともとてもよくできていて、最近のアニメではまれに見る演出と構成の統一性があるエピソードだったと思う。

そういう重いシリアスな表現は僕はいつも嫌いだと言っているけど、今回のは押しつけがましいところがなく、佐天とと黒子が自然に持つような感情のように感じられて、全然不快には感じなかった。

今回の演出は奇抜なところが多くて話題になってるようだけど、僕はそういうのを詳しく語る能力はない。ただしその奇抜さが押しつけがましさや作品の雰囲気の崩壊に繋がっていずに、必然性が感じられて、無理のない表現だったということは少なくとも僕にも言えると思う。

あとこの作品にはミステリ的な面白さはないと言ってきたけど、今回の黒子の敵のトリックの示し方は、ちょっと面白かった。

美琴について

さてこれまで空気だった佐天が前面に出てきたと思ったら、今度は美琴が空気になりつつある。というか、美琴は一話でかっこよく登場して一番立派な主役のようでありながら、序盤からあまり深く物語に関わっていない。他のキャラと違って深く悩まないし、他のキャラの精神的な支えにるようなアドバイスをすることもない(初春はそんなことはなく、存在しているだけで佐天と黒子の支えになっているという感じが少なくともする)。かといって多くの主人公がそうであるように達観した立場から他のキャラを傍観する立場にあるかというと、そうでもない。あるのは紋切り型の正義の味方的な見せ場と、対上条用のツンデレと、一見お嬢様のようで実は悪ガキだという等身大の親しみやすさぐらいである。ほとんどマスコットキャラ的存在といっていいと思う。

一応グラビトン事件の犯人を捕まえた時に美琴の過去云々という話はあったので、佐天と同様に伏線を張っておいて後でシリアスな側面を前面に出そうと言うことだろうと思う。このノホホンとした何も考えてなさそうなお嬢様が、その背後に一体どんな深刻なものを抱えているのか、ちょっと楽しみである。