第12話「何も見ていない私の瞳から」

何から何まで素晴らしい出来だった。特にOPで伏線になっていた麦端祭を眞一朗の成長に結びつけて、見せ場にふさわしく力強く描いていたのがとても良かった。これまで視聴者が目を背けたくなるような彼の痛々しい描写をしてきたからこそ、今回の表現が引き立つ。成長した眞一朗が最終回で直面するであろう障壁にどう立ち向かうのかとても興味が引かれる。

今回特に気に入ったのはやっぱり眞一朗が壇上で踊ってるのを乃絵と比呂美が眺めてるシーン。(一番重要なシーンに作画や演出に力が入ってるのはこの作品はさすがにわかってるという感じがする。)踊りのアニメーションが優れているのはもちろんだが、複雑なカット割りで描かれた比呂美の心情の表現が特に印象的だった。そのシーンの最後で比呂美は乃絵の方に少し下を向いた顔を向けていて、踊りが終わった瞬間にはっと気付いて眞一朗の方を向くわけだけど、それが好きな人のことより嫉妬心に無意識に支配されてしまう女の本性を表してるように感じられて、比呂美がとてもリアルな女に見えた。そのシーンの後に見始めたときと同じような安心した表情に戻ってしまうのも自分の感情を制御できない女っぽさが感じられて良かった。

これを書きながらこのシーンを見返して見たけど、松明の明かりや太鼓をたたく描写、踊りの描写のカット割りの仕方など、今回の麦屋踊りは本当に迫力のある表現だと改めて感心する。眞一朗以外の人もきちんと描いてある。やっぱりすごいアニメだと思う。