第8話 「ハジマリ」

なにかとんでもないことが行われていて、それがハッタリでないのもわかるのだが、僕の処理能力では一回見ただけでは到底すべてを吸収できてそうもなかった。もちろんそういった表現を否定するつもりはないが、似たような抽象的な表現を行ったTVエヴァのラストは、10年前の自分にも一発で吸収できた(少なくともそういう気にはなれた)ことを考えると、この抽象性を維持しながらもっとわかりやすい表現の仕方があるんじゃないかと思う。そのために重要なのは人間の感情と表現の対応関係を明確にすること、そもそもキャラクターの性格をはっきりとしておくことだろう。そうすれば抽象的な表現も混乱を招くことがなくなる。

それはそれとして、今回の中心的な内容は、キラメキの狂気の描写とフミカの成長を描くことだったといえる。前回から引き続いて描かれたキラメキの狂気の方は、それを表現する映像は非常に面白く刺激的ではあったが、その狂気に実感をもてたかというとそうでもなかった。狂気は端的に狂気であって、一般人の理解の届かないところにあるからこそ狂気であるといわれればその通りなのだが、僕の倫理観としては人間はどんな異常に見えても根底では共通の部分を持っていて、端的な狂気はあり得ないと考えているので、個人的にはどんな狂気にも人間らしさを持たせて欲しいというのがある。

フミカの描写の方は混沌とした親父の描写とは正反対に、友情に助けられて自分を取り戻すという恐ろしくベタな解決が最終的には示唆されていて、普通の少女の成長物語として非常に好感が持てた。シリーズ序盤から妙に大人びた言動を繰り返していたのも、無理に背伸びをして大人のまねをしていたと考えると納得がいく。今回の春乃の大胆な性格の描写なんかもそうだったが、キャラクターを人間らしく描くところは徹底して人間らしく描いていて素晴らしい。

ただそういった描写とキラメキの表現に代表される半分喜劇に踏み込んだ奇怪な表現の食い合わせはどうかというと、個人的にはあまり歓迎できないなあ。