第87話「私と仕事どっちが大事なのとかいう女にはジャーマンスープレックス」

今クールの銀魂は作品のテンションが全く途切れることなくものすごい回の連続だったが、最後になって上り詰めたと現時点では感じてしまうような素晴らしいものを見せてくれた。

作画・構成・ダイアログ・演出・声優の演技のクオリティが高いのはもちろんだが、銀魂銀魂たらしめてる要素として明確なテーマの提示というのがあると思う。

今回は自分の信じることのために前に突き進もうとする男たちと、それを陰から見つめることに喜びを感じる女性の美しさがテーマになっていたわけだが、これは現在ではあまり価値を認められていない伝統的な男女のありかたを描いているといえる。

今回のラストで、この作品はそういった伝統的な価値観に対してはっきりと肯定の態度を示した。もちろんこれは必ずしも正しい結論だとは到底いえないわけだけど、だからこそ、はっきりとした意見を提出する姿勢には意味がある。誰もが認める価値観に安易に賛同しても意味はない。

銀魂が偉いのはそういった強いメッセージを伝えるためにまず作品をエンターテイメントとして成立させていることだと思う。メッセージだけを強調してつまらない作品では誰もメッセージに耳を傾けない。エンターテイメントとして面白くてもメッセージがなければ、その経験は単なる刹那的な刺激でしかない。だからエンターテイメント性とメッセージ性というのは価値のある作品にするためには切り離せないもので、その両立を見事に成し遂げてるのが銀魂の素晴らしいところだと思う。そういう作品は本当に滅多にない。