第4話「無垢」

「わかんねーよ、そんな、女の子の気持ちに沿ったやり方なんて。」

実に面白い。登場人物の誰もが他人の心を完全に理解していおらず、自分の行動がどういう結果を生むかということに自信を持てない。見てる側にとっては安心できる視点を獲得することができず、しかし彼らの行動は我々も中学生の頃なら持っていたであろうような欲望に忠実なもので、キャラクターに嫌々ながらも共感せざるを得ない。この不安定な感じを強制される感じが非常にいいのです。リアルでは絶対に経験したくありませんが。

誠は恋愛やおいて不器用かつ非情なのはわかりきったことだったが、言葉も今回のエッチをしてもいい状況の話のぶっ飛んだところや、自分の性に対する気持ちすらはっきり理解してないところから、本格的に不器用であることがわかる。これまではわりと全体を把握する立場にいた世界も、今回は自分の欲望と善意と自制心がごちゃごちゃになって自分でも自分の行為を理解してないような感じだった。どこに感情移入しても安心できない。

今回の世界の行動について、少し書いておこうと思う。世界の行動はありえないか? オタクの妄想を投影した夢物語か?

そんなことはないと思う。普通の物語においてのキャラクターの行動は、倫理や常識において成熟した大人の観点から考えられている。どんな悪い行動や非常識な行動においても、そこには大人の道徳的、常識的規準から見てよい行動というのが前提されていて、それらの反対のベクトルを持った行動が取られている。だからいくら悪や非常識を描いても、そこには常に常識的な観点が影として存在していて、本当に不安になることはない。

しかしこの作品の登場人物の行動は、今回の世界の行動も含めて、子供であるゆえに常識を知らないキャラクターたちの妄想や欲望からそのまんま出てきたようなものに見える。誠は我々か見れば下衆野郎だが、本人には自覚がないし、周辺の人物にとってもあまりそう思われていない。自分の欲望に沿って行動して、それに対する反応を受けて、それでおしまいである。その反応が予想と違えば違和感を感じるが、それが一般的に見て良いか悪いかということはそもそも考慮に入れられていない。

今回の世界の行動も、我々から見れば露骨な誘惑だが、本人には恐らくその自覚がなく、また誠もあまりわかっていない。そもそも世界の感情というのは当初から一貫性を持って描かれておらず、視聴者にとってはよくわからないキャラである。しかし共感できないかというとそうでもなくて、部分部分ではわかりやすい内面の表現がなされており、どこか理解できるようなキャラでもある。(原作未プレイで、それにどのような意図があるのかは知りません。)

今回の世界の行動も同様で、期待や不安があるのは感じられたし、勢いにのって考えずに行動してしまっていることも、十分に何をやってるか把握してることも感じられた。そしてそれらの相反する感情がどちらともなく描かれていて、真意はやはりよくわからない。そしてそれが恐らくは自分自身の予想を越えた重大な結果を生み出してしまいそうになった。

しかし、子供の頃の感情のありかたっていうのはこういうものではないでしょうか。いろんな感情がごちゃごちゃに渦巻いていて、全然自分でコントロールすることができない。それで時には欲望に負けて反社会的、半人道的な行動を取ってしまうこともあるし、考えずに行動して予想を越えた重大な結果を生み出してしまうこともある。

だから、今回の世界の行動はオタクの妄想を体現したものというよりは、一般的な常識を持たない、様々な感情の渦巻く子供の感情を持った人間が、そういう感情の強さのあまり自分でも了解できないような行動を取ってしまったものであり、現実に十分にありえる、リアルなものなのではないかと思う。

だから、とんでもなくエロい。