第12話 「おいしくて、花嫁修業」

「大事な人のために作る料理は、疲れてても、幸せで楽しいから、全然平気なんだって」
今回もプロットとしては凡庸なものの、まちのキャラ表現が気の利いた楽しい演出によって丁寧に行われていて、十分に楽しめる回だった。特にちかげが飛ばしてくるものを避けたり、ちょっとぶつかったりするときの表現は可愛らしくて絶品だった。

以前この作品には伝統的な女性の姿が表されているとかいたが、今回のすずとあやねの料理に対する考え方はその印象を強めるものだった。あやねはいつもの印象ではギャグキャラで、何も考えてない遊び人のような感じだけど、そのキャラがあたりまえのように料理をしていて、しかも仕事をしてもいる。そのギャップに本人は何の疑問も抱いていないし、視聴者から見てもその姿は、現代の女性のあり方から違っていても、自然にみえるものじゃないかと思う。特にそう感じたのは、あやねが料理をするのが嫌になることもあると言ったときで、その言い方が非常に打ち解けた言い方で、現代人と違った価値観の元での日常会話という感じが良く出ていた。

この作品は一見到底そんなリアルな人間観が表れるものには見えないし、設定的にも現実にはありえないものばかりだけれど、時々そういった現代人の忘れているような力強い女性像が見えてくる瞬間がある。これはやはり丁寧なキャラ表現の賜物だと思う。フィクションでも、フィクションの程度を一定に保って丁寧な表現を行っていけば、現実以上に現実的なものが見えてきたりするものです。