第10話 「ちゃくちゃくと」

いつも話しが面白すぎてあまり気付かないが、三橋が感情移入できるキャラかというと、意外とそうでもないように思う。今回のチームメイトを誕生日によんだことがばれてどぎまぎするところなんかは、表現したいことはよくわかるんだけど誇張しすぎのせいであまり共感することが出来ない。コミカルな表現を多用して極端に誇張された三橋の感情表現は、外側から見れば面白いが、感情移入をはばんでしまってるように思う。ある性格を誇張すればそれだけわかりやすく、強い印象を与えることが出来るが、その分リアリティは低くなって現実離れしてしまい感情移入できなくなってしまう。こういうジレンマは常に物語に存在するものだが、この作品の場合はキャラたちのリアルで率直な感情表現が売りなのだから、誇張した表現は控えた方が良かったんじゃないだろうか。

今回の話で重要なのは阿部が三橋を単なる道具としてのピッチャーとしてだけではなく、人間として本気で幸せになって欲しいと思ったということ。これまでの話の積み上げがあるので、十分に説得力はあるんだが、今回の話をいっぱいに使って阿部の心境の変化を描いてくれた方が、中休み的な構成よりはよかったと思う。前も書いたけどチームのメンバー全員は単なるいい人としてしか表現されてないから、三橋とメンバーたちの強い結束を感じることはできない。とはいえ全体的にぎこちない雰囲気が学生らしく青臭くてリアリティを与えているようには思う。