第8話 「コンペイトウ夜話」

春香の異様さについて、似たような感情を抱いたまなびストレートの学美と比べて考えてみる。まず両者とも根拠のない強いエネルギーをもっている主役であることでは共通している。根拠がないというのはその性格を獲得するまでの道のりが描かれていず、天性の能力であるように見えるということ。そのエネルギーが周囲と反発すれば面白くもなるのだが、周囲と適応してしまっている。これでは単に有能な人間がうまくやってるだけで、そんなものを見せられても物語としては面白くない。これだけとれば主役としてふさわしいキャラではない。

しかしキャラの性格の統一感という点では春香の方が上に感じる。学美は、個人的な印象では、いつも目の焦点があっておらず言動や行動に統一性を持っていない。むしろそのエネルギーの行き先の不明感が彼女の特徴であったように思う。統一感をもった性格はむしろ脇役(特に蜜柑)が引き受けていた。

一方で春香は、ロボットに擬似恋愛感情を抱くという方向性は異様であるものの、その感情自体は明確な自信に基づいたもので、しっかりと目の焦点を合わせて考えたり行動している。これはセリフ回しや声優の演技の仕方から、制作者の意図した表現としてはっきりと感じ取ることができる。口癖のような「まいっか」に象徴されるように、彼女の世界に対する態度は表面上曖昧ではあるが、それは自分自身の心の中に確固とした核があるから表面上曖昧でも平気だということであって、むしろ彼女の世界に対する自信の表れだといえる。

だからといって、春香に対して、まなびにおける蜜柑のように好意的に感情移入できるかというとそうでもない。蜜柑は無能という設定のキャラだから感情移入しやすいが、春香は最初に言った根拠のない強いエネルギーがあり、自分と重ねることは一般に難しい。さらに彼女のインベルに対する態度は常識的には考えられないような、押し付けがましい母性的な接し方であり、同じ立場に立つことはまず想像できない。

つまり春香はまず無根拠にエネルギーをもってるという時点で視聴者から離れてしまっているわけだが、妙な母性的な考えや言動のせいでさらに近づきがたいキャラになってしまっている。さらにその近づき難さが自信をもった統一感のあるキャラとしてはっきりと描かれていて、異様さを増している。

で、なぜにそんなものを描きたがるのかというのが、いまのところよくわからない。