第8幕 「一人じゃない」

精一杯やれば辛い思い出もいい思い出になるとか、半年の思い出を失いたくないとか、そういった臭いセリフを、実感をもたせるだけのエピソードの積み上げがないまま言っているので、押し付けがましく感じる。特に野乃はいいセリフを言わせなくても雰囲気だけで説得力があるので、あまりはっきりとした言葉でメッセージを伝えて欲しくない。半年の思い出というのもこれまでの話が短すぎてまったく実感がない。1クールでこのセリフを言わせなければいけないのならしょうがないとも思うが。

演劇中に野乃が唐突にメンバーについての回想を始めたときは唐突に感じたが、たぶん声優の演技力のおかげだと思うが、その臭い雰囲気にもかかわらず、実感を持てて感動できるものだった。そこで野乃にとっての演劇研究会の重さを示したあとで、麦の内面に視点をチェンジしたのは、麦の役割の重大さを示すものとして非常に効果的だった。

しかしそこで麦が「真の実力」を発揮してしまうのは根拠がないように感じた。こういうときは月を見ると猿に変身するというようななんらかの理由がないとなかなか納得できない。決心を決めた麦の表情はいくらか説得力があったけれど。

しかし麦の実力を発揮した声といい、他のメンバーの劇中劇の演技といい、あまりにも演劇臭いわざとらしさがあって萎えてしまう。もっと「アニメ内の演劇」らしい演技をして欲しかった。