第10話 「オービター -orbiter-」

急展開で詰め込んでるのはずなのにちっとも急ぎ足だとは感じず、むしろ20分程度の話だとは信じられないぐらいゆったりとした時間を感じられる構成と演出だった。一番良かったのはやっぱり電話中の茜の両親の居場所の話で、ほんの短い時間で茜の家族の絆を十分に感じることの出来るものだった。両親は後姿を見せるだけで出てくることなくそれを表現し、しかし弟との会話は冗長さを感じるほどに長く、そこでゆったりとした自然な時間を感じることが出来る。原作はどうだか知らないが、1クールで時間のないこのアニメにぴったりの表現だった。家族との関係がきちんと解決されてるのは宇宙飛行士というあり得ない設定をリアルに感じられる要因の一つ。ゆかりもマツリもそうだが、それを手際よく短いエピソードで表現しているのが見事。

全体の構成としては最初にアメリカの宇宙船のシーンから始まって意外性を感じさせてから、徐々にゆかりたちの筋と絡めていく展開が面白かった。世界中の人が三人目の宇宙飛行士の登場に驚いてるのを地球全体を見せて表現して、その地球から宇宙船へとカメラが後ろ移動する見せ方なんかは意外性もあって特に面白かった。そうやって少しずつ関連を暗示していくというわけですね。

ほんの少しのミスで20年以上のの国を挙げた努力が無駄になったり、簡単に取れそうなものがどうしても取れないことなどは、宇宙飛行の世界の繊細さが感じられて素直に興味深かった。宇宙空間での作業もゆっくり丁寧に描かれていて、真剣さや作業の難しさを感じることが出来た。特にちょっとそのパーツに触れただけでもう取れなくなってしまうというもどかしさはものすごくリアルだった。

ゆかりたちの側の人間の描写は相変わらず自然だったけど、アメリカの宇宙飛行士の側の描写も丁寧だった。博士に対する尊敬や、自分たちのプライドなどのによって相反する感情を持ってることが痛いほどよくわかった。そのことをゆかりたちはまったく知らず自分たちの問題に精一杯になっていて、次回以降両者がどんな風に関わっていくのかに不安を感じてしまうほど。

作画的にはいまいちだけど、制作者はまったくあきらめずに本気で面白いものを作ってやろうとしてるよう。後2回(たぶん)、本気で期待。