第6話 「コントロール −control−」

とても二十分程の出来事とは思えないほどに密度のある展開。特に強い印象に残るシーンや際立った技術に感心することもないのだが、構成や演出が上手く、内容の要求する表現は十分に行われていたと思う。

前半は基地とロケットの間のやり取りは、過剰に恐怖や混乱を見せることなく地道に状況の推移を描いていくことによって、基地の人々の緊張感とゆかりが恐怖に陥って行く様が見事に表されていた。多少よくわからない専門用語も交えてるのはリアリティがあって良かったし、しかしそれがロボットアニメに良くある単にかっこいいだけのセリフにもなっていないのもリアルさを助けていた。とはいっても内容に関しては素人でも十分についていけるもの。派手さのない音楽、ひたすら交互に繰返される基地とロケットの音響効果。そういった地味なリアルさで描かれてきたものだからこそ、万策尽きてしまった時の絶望感も非常によくわかるものだった。

後半はゆかりが酸素が薄くなる中絶望に陥って行くシーンが十分な尺をとって、さらに気の利いた回想シーンも交えて描かれていて本当に良かった。最後に基地の人のゆかりたちの無事を喜ぶシーンがないところや、母親や学校の人たちが心配するシーンが短く済まされてしまったところなどから、構成がきつきつなのは明白で、その中でこれだけの尺をとってこのシーンを描いたのは見事な選択。ゆかりとマツリが抱き合うシーンは、特殊な趣味を持つ人は悶絶死しただろうが、姉妹の心が通じ合ったシーンとして素直に感動しましたよ僕は。ラストの突入時にマツリの表情をあえて映さないのも粋な演出で良かった。800キロってものすごく辛かったはず。どんな表情してたんだろう?

他にも僕の気付かない「保守的」なアニメの技術が大量に使われていたんだろう。キャラも演出も設定も地味なので誰も騒いだりはしないだろうけど、ゆかりが父親を探しにし来てから宇宙飛行に成功するまで、こんなに短い時間でよくここまでリアルで感動的な話を作ったものだと思う。1クールでもダメな作品が多いのにこれは半クールですよ。

脚本:中瀬理香 絵コンテ:渕上真 演出:渕上真 作画監督:猿渡聖加