アニメの面白さの説明を説明する その1

性懲りもせずあるアニメ作品がなぜ面白いのかを説明するとはどういうことかを考えてみる。

まず「説明」一般における問題を考えよう。ある事象の理由を説明するということには、二つの問題が付きまとっている。一つは(1)その事象自体が特定されていないことがあるということで、もう一つは(2)理由が複数ある場合、その重み付けをどのようにするかという問題である。

(1)から考えよう。例えばうぶな中学生の僕が幼なじみの花子さんのことが好きだと感じていて、その理由を説明したいと考えていたとする。花子さんはがさつで乱暴でいつも僕に冷たい。にも関わらず僕が花子さんを好きだと思ってしまうのはなぜだろうか、と。そして僕がそのことを友人に話したら、それは好きは好きでも友達としてではなく恋愛対象として好きなんだと諭されたとする。この場合、僕は説明において説明の対象となる事象を取り違えていたのであり、それが原因で説明に失敗していたのである。

次に(2)を考えよう。例えば僕がPS3を買った理由の説明を考えてみる。僕はアニメDVDを見るために買ったので、「アニメDVDを見るため」という説明は十分であるように見える。しかし、よく考えてみれば僕は次世代ゲームをやりたいとも思っていたし、最近の流行に乗りたいという思いもあったし、ネット上のPS3を誉める記事を読んだからということもPS3を買った理由の一つである。もしくは僕がよく覚えていないPS3を絶賛する2chの書き込みも理由の一つであると考えても、まったく不自然なところはない。さらにはPS3の購入を決意した日はたまたま僕の機嫌がよく財布のヒモが緩みやすかった、というのも理由の一つかもしれない。つまり、把握可能不可能に関わらず、僕がPS3を買ったと言うことには非常に多くの理由が存在するのである。

しかし、僕は主にアニメDVDを見るためにPS3を買ったのに、その理由を「次世代ゲームをやりたいから」と説明するのは誤りであるように聞こえる。「PS3の購入を決意した日に僕の機嫌がよかったから」といえばさらにおかしい。それはなぜかと言えば、それらの理由が僕がPS3を買った主要な理由ではないからである。つまり、ある事象の説明が妥当に聞こえるのは、その説明がその事象の主要な原因を示している場合だけなのである。もちろんその説明は、主要なものだけで構成されていれば、複数合ってもよい。例:「僕がPS3を買ったのはアニメDVDを見るためと、次世代ゲームをやるためである」

ここまでのことをまとめると、ある事象の妥当な説明をするためには(1)その事象を正しく特定して、(2)その事象の主要な理由を捉えなければいけない。

……疲れたのでこの辺で。次はこの理屈を使って「なぜあるアニメが面白いのか」についての説明が妥当であるとはどういうことかを考えます。たぶん。