今期総括

まだ視聴未完了の作品も多いけれど一応今期総括的なことを。

まず今期最も面白かったのはONE OUTSとスキップビート!。ONE OUTSは反則やインチキまがいのことなど何でもありながら論理的にはきちんと筋の通った頭脳戦が抜群に面白く、また努力や偶然と言ったそれ以外の要素が一切結果に反映されないのも面白さの純度を高めていた。ネタやパロディもなく、女性キャラやエキセントリックなキャラが一切登場しないのも面白さの純度を高めていて、最近のアニメとしては新鮮でもあった。未読だけれど恐らく原作が素晴らしく、アニメはそれを忠実に再現したからこんなに面白いのだと思う。

スキップビート!はまず幼なじみの恋人に捨てられた凡庸な女の子が芸能人を目指すという全体のストーリーが、アニメで似たような話ばかり見せられている身にとっては新鮮だった。それから主人公の性格付けが視聴者の共感を呼ぶ弱気なところがありながら、女の底なしの恐ろしいエネルギーも同居していて、見ていて非常に爽快だった。しかし彼女がいくつかのピンチを立派なところを見せてあまりにも華麗に乗り越えてしまったのは、彼女に対する共感をしづらくしてしまっていたと思う。あとこの作品はギャグ表現が非常に魅力的で、シリアスな空気との整合性を維持しつつも、時々羽目を外してやり過ぎてしまうのが心から楽しかった。これも未読だけれど原作の面白さに多くを負っているように見える。

以上二作品は僕の興味の対象である萌え系作品ではないので、最も面白い作品ではないにしても個人的には以下の作品が重要。

まずヒャッコ。この作品はまず萌え系作品では定番のキャラクターと、日常・空気系の作品としては定番の中身のない物語として始まり、面白く効果的な演出もあり、シリーズ序盤はまさに自分の求めている作品のように思えてとても楽しめた。虎子が多様な側面から描かれていて、萌え系作品を越えた人間の深みを感じられるのも魅力的に感じた。しかしシリーズ後半虎子が過剰に描かれてしまい、いまいち彼女の性格が像を結ばなくなってしまった。また深刻な人間関係や家族の問題が現れるようになり、萌えアニメとしてにしては空気感が重くなってしまった。最終的には、そういった萌え系作品への期待と深刻さの齟齬があって、あまりこの作品にいい印象を持てなかった。

その一方で今日の5の2は序盤はそれ程魅力を感じなかったけれど、後半になって作品が好きになっていった。この作品を見た最初の印象は各キャラの性格がはっきりしないということと、ギャグが地味だということだった。定番の萌えキャラのパターンを使い、一見してどんなキャラか理解できるヒャッコと違って、この作品のキャラにはそういったわかりやすい特徴があまりなく、最初はあまり好きになれなかった。ギャグも地味であまり興味を持てなかった。しかし回を重ねていくごとにキャラに親しみを持てるようになり、作品世界も愛せるようになってきた。ギャグも一回ノリを掴めばそこそこ楽しめるようになってきた。なぜこの作品を徐々に好きになってきたかというと、雰囲気や演出の方向性が一貫していて、作品世界への没入を阻害する物がなかったからだと思う。他のアニメだと回によって作画がよすぎたり演出が凝っていたりパロディがあったりなかったりして、なかなかそうはいかない。言ってみればこの作品はファンを喜ばす特別なことをせず、普通であったにすぎないのだけれど、普通であること重要性というのはなかなか気付きづらい。それにこの作品はエピソードと美術の両方によって表された緩やかにすぎていく季節の表現、胸がこそばゆくなるようなノスタルジックな表現が美しく、ちょっとアニメでは滅多に感じられないものを感じることができたように思う。

次にとらドラ!。この作品も第一話はとても地味な印象だったのが、徐々に好きになっていく作品だった。最初好きになれなかったのは、一見萌えアニメのような外見をしていながら、ドジッ娘とかツンデレとかあまりわかりやすい女の子のかわいさが描かれなかったからだと思う。大河は一応ツンデレではあるけれど、他のアニメのツンデレのようなわかりやすい性格を持っておらず、安心して萌えられるキャラではなかった。他のキャラも同様に単純ではなかった。だがそのわかりづらさは現実の人間のわかりづらさそのものであり、それはシリーズ後半友情とも恋愛とも付かない関係をリアルに描くのに非常に貢献していた。友情以上恋愛未満の関係を描くのは萌えアニメの義務だと思うけど、それは普通はパターン化され、受け手によってキャラの本心の把握が可能なキャラたちを描くことによってなされる。この作品の場合は友情以上恋愛未満をパターン化されていない、本心を受け手が推し量ることができないキャラを描くことによって行っている。これは受け手に不安を与える物であり、萌えアニメとしては逸脱しているようにも思えるけれど、こういうあり方もそれはそれで楽しめる。

さてかんなぎ。まだラスト2話を見ていないので完全な感想ではないけれど、正直話題の大きさほどには楽しめる作品ではなかった。まずシリーズ全体のストーリーがあるんだかないんだかよくわからなかったのが見ていて不安にさせた。ストーリーがあるならシリーズ序盤で作品の方向性を示すか、もしくは最初かららき☆すたのように物語がないことをアピールするとかしてくれればよかったんだけれど、そういうのはなく、不安に感じるばかりだった。それからネタやパロディが多く、せっかくのシリアスなストーリーを台無しにしている回もあり、シリアスをやりたいのかギャグをやりたいのかはっきりして欲しかった。つぐみが仁について思い悩み、仁を励ます一連のシーンなど印象的なシーンは多かったのだけれど、作品全体の方向性が散漫でいまいち心から楽しめなかった。でも自分には見えていないわかる人にはわかる面白さが至る所にちりばめられているるんじゃないか、と言う気はする。

今期まともに見て興味を持った作品はこれぐらい。ここにない作品はあまり言いたいことがないか、途中で切ってしまったか、まったく見ていないかのどれか。切ったからと言って必ずしもつまらなかったというわけでもなく、主に自堕落さに起因する様々な事情が絡んでいるので、「この作品がないぞコラ。おまえの眼は節穴か」とか言わないでください。それではよいお年を。