第2話 「マレー家の誇り」

「一度決めたら炎のように強い。それがマレー家の誇りなんだ。」

はっきりとしたテーマがあり、それが十分な技術によって描かれている。コードギアスなんかはまずファンの好みに合ったパターンがあって、テーマはそれに当てはめるものにすぎないけど、こちらはまずテーマがあって、その表現のために作画や演出などの技術が動員されている。NHKだからかどうかは知らないが、オタクの流行というのを全く意識せずに作られているから、他のアニメと比べると自由にテーマを描ききれているように思う。もちろん商業的にはオタクを無視するリスクはあるだろうが、NHKの朝番組なので、これだけ出来がよければに受け入れる人は十分にいるだろう。

構成的もテーマに沿った優れたもの。ストーリーの軸は冒頭に引用した一度決めたら自分を貫き通すというマレーの血の特質で、それがエリザベスが猫を飼うことを認めないことや、自分に従わないという理由でマレーを閉じ込めて、決して外に出すなと指示することなどに表れている。エミリーの側としては、猫を捨てられないことや、髪を切るのを拒否するという、頑固なエリザベスに対して自分の意見を貫き通すことに表れている。視聴者がそういった印象を得た後に、意志の強さがマレー家の血筋の特質であることが明かされ、オチではエリザベスがエミリーの中に自分の信じるその強さを見てしまったことによって、エリザベスの方が折れるという結果にになる。ここには自分が意志の強さに価値を認めるあまり、例え認めたくない人でも意志の強さも認めざるを得なくなってしまうというミイラ取りがミイラ的な面白さがある。もちろんエミリーの強さの表現にもなっている。また閉じ込められた部屋の肖像画が、最初は恐怖を覚えたのが、その人たちの素晴らしさを知ったら肯定的な印象を持ってしまったということがエミリーの心情の変化の表現になっていたのも良い。さらにジミーやソーシーサールなど、少ないキャラクターによって構成するのは、話の密度を濃くするのと同時に、キャラの多さによる混乱を防ぎ、キャラに親しみをもてるという点で効果的。他のアニメはキャラが多くて理解するのが大変なのが多いから特にそう感じる。

エミリーがニュームーンを駈け回るシーンはキャラ的にも背景的にも作画が優れていて、自然とエミリーの一体感が良く表現されていた。普通に描いたら時代錯誤な感じがするだけだろうから、ここはアニメとしての出来のよさの賜物だと思う。