第13話 「エンドンとジャード」

「友を信じ、長い年月希望の時を信じてひたすら待ち続けたジャード。リーフはその思いを受け継いでいる」

ってバルダが言う直前、回想話が終わって「父さんにはその矢が希望の光に見えたんだ。」ってリーフが言った直後に、ジャスミンの無表情なカットが少し長めに挿入されているけど、この表情がいい。過去の話を真剣に聞いて心が動かされてるのが、その表情自体からじゃなくて前後の文脈から読み取れる。真剣な表情っていうのは無表情だから積極的には表現できない。そのために心の中の言葉を重ねたりして真剣さを表したりするわけだけど、この場合は前後のジャスミンの行動からそれがわかるようになっている。まず冒頭ではジャスミンは愚痴ばかり言っていて非常に機嫌が悪かった。それがこの話を聞いたあと、「そっか」と少し嬉しそうな表情で噛み締めるように言って、その後は飛び跳ねてしまうほどに元気一杯になっている。前回ではジャスミンは王の行動を疑っていたわけだけど、今回やむにやまれぬ事情があること、リーフには父親の希望を継がなければならないという理由があることを知って、今度は本当に旅の理由を受け入れ、自分達の行動を疑いのないものとして信じたわけです。エンドンとジャードの話は原作ではシリーズ冒頭にあって、リーフたちの話とは何の工夫もなく時系列順につながってるわけだけど、このアニメ版(マンガ版?)ではジャスミンの心境の変化を見せるために見事にストーリーの中に組み入れていて、これは本当によく出来た構成だと思った。あと毎回言ってるけどジャスミンかわいすぎ。

とはいうものの今回最大の見所はリーフ母の幼女時代であって、一体子供向けのアニメでなぜこんなに我々の嗜好にピンポイントなキャラデザをしてるのか不思議でしょうがないんだが、もうやばすぎる可愛さだった。ジャスミンもさすがに彼女には負ける。でもあのオバさんは別人です。きっと。

あと音楽がいい。ジャードとエンドンの回想が始まった時の壮大な音楽とかワクワクした。そういえばその時にエンドンたちの乳母らしき人が二人のいたずらを怒りながらも微笑んでるのも良かった、と面白い話では芋づる式に良いところが思い出されるわけですが、突然当たり前のように出てきて謎だったアクババの正体が回想の中で明らかになるという構成も見事だった。

冒頭に引用したセリフを言うバルダもかっこよすぎだし、当たり前のような表情で何気なく思い出話をするリーフも人間味があって良くて、もういいとこだらけで冷静さを失いそうになるけれど、紅茶でも飲んで冷静になってみれば肝心のジャードとエンドンの回想話自体はそれほど出来のいいものでもなかったように思う。尺が取れなかったというのもあるし、子供向けだからわかりやすくしなければいけないんだろうけど、重要な展開を十分なエピソードで見せずにナレーションで済ませてしまうのはあまりいただけない。詰め込みすぎというのは最近の多くのアニメで感じることではあるけれど、やっぱりもったいないと思った。

来週の予告では大人になったエンドンとジャードが真剣に向かい合ってるシーンがよさげ。ああもう楽しみ。

脚本:桶谷顕 絵コンテ:西村博之 演出:本郷みつる 作画監督西村博之