戦場のヴァルキュリア

戦場のヴァルキュリアをアニメを見ずに原作をプレイして、クリア後にアニメ全話を見る。

原作はまさに大作と呼ぶのがふさわしい出来で、設定やグラフィックが細部まで一貫性を持って作り込まれている完成度に圧倒された。ストーリーは大味ではあったけれど、戦争の進み方も人間のドラマもしっかりした構成で描かれていて、十分に満足できた。

原作は基本的に最近の萌え系作品の流行を意識して作られたものではないので、アニメ化してもあまり萌えオタ的には面白いものにはならないだろうと思っていたが、アニメではその予想が非常にいい感じに裏切られて大満足だった。まず新キャラの追加とヒロインの性格へのコメディチックな面の追加により、キャラクターが萌えオタ的にとても見やすいものになった。そして細かいストーリーの説明や戦闘シーンを大きく削り、ストーリーに大幅な改編を加え、キャラクター性や人間ドラマ、派手なシーンを見せることに注力した構成のおかげで、アニメとして十分に見応えのあるものになっていた。原作からのストーリーの改変は、原作をやっていても先の展開が読めず続きが楽しみになるという利点もあった。

ただし原作をやっていない人には、ストーリーの説明が不十分で、話に実感を感じられなかったのではないかという気がしないでもない。それが正しければこの作品は原作をやってストーリーの大枠を知っている人でないと楽しめない作品だということになる。また原作をやっている人の中にはストーリーの改変を快く思わない人もいるだろう。僕も原作でメチャクチャ苦労して思い入れのある戦闘シーンが、あまりにもあっけなく済まされてしまうことに不快感を感じたことが何度かあった。

にしても人間の苦悩と苦悩からの解放という物語が描くべき最も重要な人間の側面は十分に描けていたと僕は思うので、僕としてはこの作品は本質的に傑作だと思いたい。「苦悩からの解放」とは具体的に言えば例えばブルールでウェルキンが大きな苦悩から解放されるあのシーンである。そのシーンにリアリティを感じられるかがこの作品の本質的な良し悪しを決定づけるように思う。またそういうその作品の価値がそのシーンにかかっているといえるシーンが存在するという事実だけでも、この作品が優れていると言えると思う。

追記:

他の感想を見て回ったらこの記事が皮肉に受けとられかねない位メタクソに言われてて笑った。確かにファルディオの最後の取り扱いとかマクシミリアンの器の小ささとかは問題ではあるけれど、そういう問題を切り捨ててでも見せるべきところは見せる潔ぎよさが、この作品の魅力に(あるとすれば)繋がったのだと思う。

ホントツッコミどころだらけだったけどそれ以上にいいところもあったと思うんだけどねえ……